フランス文学と詩の世界
Poesie Francaise traduite vers le Japonais
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貧乏人の死(ボードレール:悪の華)


貧乏人の死

  我ら貧乏人にとって 死は唯一の慰め
  それは生きる目的 かけがえのない希望
  妙薬のように我らを高め うっとりとさせ
  我らの心を勇気付け 励ましてくれる

  死は嵐や雪や霜を乗り越え
  暗い地平線を照らす光明
  または書物に記載された名高き宿
  我らはそこで 安息できる

  死は天使 大きな手に
  眠りと夢の贈り物を抱え
  貧しいものに寝床をくれる

  死は神の栄光 神秘の穀倉
  死は貧しいもののなつかしい故郷
  死は天国に向かって開かれた門  
  

ボードレールにとって死とは、この世に生きることの終わりではなく、あの世で生きることの始まりであった。「死」と題した一連の作品は、そのようなボードレールの思想を体現したものばかりである。愛し合うものたちにとっては、死は「見も知らぬ美しい風土」への扉を開くものであり、芸術家たちにとっては、そそり立つ美の神殿へと導いてくれるものであった。

そのような死がもっとも慈悲深く現れるのは、貧乏人たちにとってである。彼らは現生になんらの慰藉をも期待することがなかった。もしあの世というものがないとしたら、彼らの悲惨さがどのようにして、償われるというのか。

貧乏人たちにとって、死は神からの唯一つの贈り物なのであり、天国に向かった開かれた門なのである。






La Mort des pauvres - Charles Baudelaire

  C'est la Mort qui console, hélas! et qui fait vivre;
  C'est le but de la vie, et c'est le seul espoir
  Qui, comme un élixir, nous monte et nous enivre,
  Et nous donne le coeur de marcher jusqu'au soir;

  À travers la tempête, et la neige, et le givre,
  C'est la clarté vibrante à notre horizon noir
  C'est l'auberge fameuse inscrite sur le livre,
  Où l'on pourra manger, et dormir, et s'asseoir;

  C'est un Ange qui tient dans ses doigts magnétiques
  Le sommeil et le don des rêves extatiques,
  Et qui refait le lit des gens pauvres et nus;

  C'est la gloire des Dieux, c'est le grenier mystique,
  C'est la bourse du pauvre et sa patrie antique,
  C'est le portique ouvert sur les Cieux inconnus!

  

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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007
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