フランス文学と詩の世界
Poesie Francaise traduite vers le Japonais
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 涙:言葉の錬金術(アルチュール・ランボー)


  鳥たちや獣たち村の娘たちから遠く離れ
  ハシバミの林に囲まれた潅木の傍らで
  俺はひざまついて渇きを癒した
  暖かいグリーンに包まれた霧の午後

  オワーズの流れの中に俺が汲み取ったものは何か
  声なき楡 花なき芝 覆いかぶさった空
  ワインの実から俺が摘みとったものは何か
  汗をもよおす黄金のリキュル

  俺の姿は安宿の看板のように見えただろう
  すると空が掻き曇り嵐は夕べまで吹き荒れた
  国々も 湖も 極地も黒く覆われた
  夜空の下の列柱 鉄道の駅も

  森の水は処女なる砂に流れ込み池をなした
  風が空から舞い降りて池に氷の塊を投げる
  俺は俄かに猟師になったみたいに
  水を飲む気持も消え失せたのだった
   

ランボーとヴェルレーヌ

1872年の5月から6月にかけて、ランボーは多産な詩作活動をした。周辺から孤立してパリで生活する手立てを失ったランボーは、いったんシャルルヴィルの家に戻ったのであるが、この年の5月半ばにパリに来てからは、旺盛な創作意欲を示した。ランボーが韻文で創作する最後の時期でもあった。

この時期に書かれた作品の多くは、「地獄の一季節」の中の「言葉の錬金術」に一括して収められている。「涙」はその冒頭にある作品であり、また一連の作品の中で、最も早く書かれたものである。ランボーはこれを「言葉の錬金術」に収めるに当たって、内容を一部書き換えているが、ここではオリジナルな姿のものを取り上げる。






Larme : Arthur Rimbaud Mai 1872

  Loin des oiseaux, des troupeaux, des villageoises,
  Je buvais, accroupi dans quelque bruyère
  Entourée de tendres bois de noisetiers,
  Par un brouillard d'après-midi tiède et vert.

  Que pouvais-je boire dans cette jeune Oise,
  Ormeaux sans voix, gazon sans fleurs, ciel couvert.
  Que tirais-je à la gourde de colocase ?
  Quelque liqueur d'or, fade et qui fait suer
 
  Tel, j'eusse été mauvaise enseigne d'auberge.
  Puis l'orage changea le ciel, jusqu'au soir.
  Ce furent des pays noirs, des lacs, des perches,
  Des colonnades sous la nuit bleue, des gares.

  L'eau des bois se perdait sur des sables vierges
  Le vent, du ciel, jetait des glaçons aux mares...
  Or ! tel qu'un pêcheur d'or ou de coquillages,
  Dire que je n'ai pas eu souci de boire !

  

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