フランス文学と詩の世界
Poesie Francaise traduite vers le Japonais
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月の光 Fetes Gallantes(艶なる宴)

 
  君の心の風景は独創的な絵のようだ
  魅惑の仮装行列が行進し
  縦笛を吹き踊る人が描かれているが
  仮面の下には悲しそうな表情がある

  短調の調べに乗せて
  愛や命を歌っているが
  幸福そうな顔には見えない
  歌声は月の光に溶け込むばかりだ

  静かな月の光は悲しくも美しい
  小鳥たちは木の枝に夢み
  噴水は恍惚にむせび泣く
  大理石の像の中の繊細な水のほとばしり
   

ワトー「艶なる宴」

艶なる宴 Fetes Gallantes は、ヴェルレーヌにとって実質的には第二歌集である。サチュルニアン詩集によって、彼の独創性は広く認められるようになったが、この詩集はその延長上にあって、音楽的な要素や、甘い感情を歌った。

歌の多くには、男女の愛のやり取りが描かれているように見える。だがこの時期、ヴェルレーヌが特定の女性と恋愛関係にあったという事実はない。彼は、リュシアン・ヴィオティという年少の青年と懇意になり、一緒に喜劇台本を書いたりしているが、この青年とは同性愛の関係にあったともいわれている。

だから、この詩集に描かれた愛の世界は、同性愛者の世界なのだとするうがった見方もある。

ヴェルレーヌ自身は、ワトーや同時代の画家たちからインスピレーションを受けて、詩の中に視覚的なイメージをもたらしたかったのだといっている。だが、我々の印象としては、視覚的なものよりも音楽的なものをより強く感じる。

ドビュッシーは、この詩集の中から「月の光」を取り上げ、そのイメージを音楽に翻案した。ドビュッシーの作品の中でも最も人気のある曲の一つだから、聞いたことのある人は多いだろう。






Clair de lune : Verlaine

  Votre ame est un paysage choisi
  Que vont charmant masques et bergamasques
  Jouant du luth et dansant et quasi
  Tristes sous leurs deguisements fantasques.

  Tout en chantant sur le mode mineur
  L'amour vainqueur et la vie opportune,
  Ils n'ont pas l'air de croire a leur bonheur
  Et leur chanson se mele au clair de lune,

  Au calme clair de lune triste et beau,
  Qui fait rever les oiseaux dans les arbres
  Et sangloter d'extase les jets d'eau,
  Les grands jets d'eau sveltes parmi les marbres.

  

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