フランス文学と詩の世界
Poesie Francaise traduite vers le Japonais
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アルバトロス(ボードレール:悪の華)


アホウドリ

  海の男たちは時折 気晴らしのために
  巨大な海鳥 アホウドリをつかまえる
  航海の怠惰な同伴者
  すべりゆく船を追いかける怪鳥

  甲板の上に置かれるや
  海原の王者の何と不器用で情けないことよ
  悲壮にも引きずった白く巨大な羽は
  まるで二本の櫂のようだ

  この大空を飛ぶ者の 何と無様で弱々しいことよ
  堂々たる海の王者も 何と間抜けにみえることよ
  陶器のパイプで嘴をつつかれたり
  ばたばたとさせながら 飛べないさまを真似される

  詩人たちもこの空の王者にどこか似ている
  嵐をものにせす 飛んでくる矢を笑っているが
  ひとたび地上に舞い降りるや
  大きな羽が邪魔をして 歩くこともできないのだ
    

「アホウドリ」は再版では、「祝福」に続いて二番目に載せられているが、初版には載っていない。初めて発表されたのは1859年、オンフルールで印刷した小冊子の中でだったが、その際には第3節が欠けていた。友人シャルル・アスリノーの教唆によって、現在のような形に書きなおしたらしい。原型は20台のはじめ、ブルボン島からフランスに戻る船の中で書いたもののようだ。

アホウドリは今では絶滅寸前にまで減ってしまったが、ボードレールの時代には、航海にはつきものの鳥だった。詩にあるとおり大きな鳥で、海の王者ともいうべきだが、一旦陸にあがると、大きな羽をもてあまして、無様な格好で歩く。(白鳥にも似たところがある)そのさまが、詩人に似ているといって、ボードレールは両者をともに笑い飛ばしているのである。

ボードレールはあるいは、アホウドリの姿に、自分自身を見たのかもしれない。






L'Albatros — Charles Baudelaire

  Souvent, pour s'amuser, les hommes d'équipage
  Prennent des albatros, vastes oiseaux des mers,
  Qui suivent, indolents compagnons de voyage,
  Le navire glissant sur les gouffres amers.

  À peine les ont-ils déposés sur les planches,
  Que ces rois de l'azur, maladroits et honteux,
  Laissent piteusement leurs grandes ailes blanches
  Comme des avirons traîner à côté d'eux.

  Ce voyageur ailé, comme il est gauche et veule!
  Lui, naguère si beau, qu'il est comique et laid!
  L'un agace son bec avec un brûle-gueule,
  L'autre mime, en boitant, l'infirme qui volait!

  Le Poète est semblable au prince des nuées
  Qui hante la tempête et se rit de l'archer;
  Exilé sur le sol au milieu des huées,
  Ses ailes de géant l'empêchent de marcher.

  

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