フランス文学と詩の世界 |
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Poesie Francaise traduite vers le Japonais | |
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旅への誘い(ボードレール:悪の華) |
旅への誘い 愛しい我が妹よ 思い描いてごらん かの地で共に暮らす喜びを! 心行くまで愛し合い 死ぬまで共にいよう お前に似たあの土地に! 曇った空の果てに 太陽は霧にかすみ 我が心を魔法にかける 神秘的な魔法 涙に濡れたお前の いたずら気な瞳のような かの地にあるのは秩序と美 奢侈と平和と悦楽 歳月に磨かれて 光り輝く家具が 我らの閨を飾るだろう 類なき花々の 香ばしい匂いが 琥珀の香りと溶け合うだろう 飾り天井 深い鏡 オリエントの輝き それらすべてが我らの心に 甘い言葉の数々を ひめやかに語りかけるだろう かの地にあるのは秩序と美 奢侈と平和と悦楽 そこここの運河の上では 多くの船が錨をおろし 新たな旅立ちに備えている とりもなおさず お前のために 地の果てからやってきたのだ 沈み行く太陽が 地上を包み込み 運河も 街全体も 黄金の色に染まる そして世界は眠りにつく 暖かい光の中で かの地にあるのは秩序と美 奢侈と平和と悦楽 |
![]() ワトー画「シテールへの船出」 |
「旅への誘い」はボードレールの詩のなかでもとりわけ有名なもので、音楽性といい、内容といい、高度な完成に達している作品である。 この詩はマリー・ドーブランのために書かれたとするのが通説である。発表されたのは1855年の「悪の華」詩篇の中でだが、書いたのはその前年であろう。その頃ボードレールはマリー・ドーブランと深い仲になり、二人でオランダにいくことを考えていた。結局この計画は実現しなかったが、ボードレールは二人だけで暮らす夢想を美しい詩に残したのである。 詩の中では、目指す地は、「曇った空の果てに、陽は霧にかすみ、我が心を魔法にかける」と歌われている。オランが逸楽に相応しい土地とはボードレールも思っていなかったに違いない。ただ愛する女と二人暮らす喜びが、その土地を輝かしい色に染め上げているのだ。 |
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L'invitation au voyage - Charles Baudelaire Mon enfant, ma soeur, Songe à la douceur D'aller là-bas vivre ensemble! Aimer à loisir, Aimer et mourir Au pays qui te ressemble! Les soleils mouillés De ces ciels brouillés Pour mon esprit ont les charmes Si mystérieux De tes traîtres yeux, Brillant à travers leurs larmes. Là, tout n'est qu'ordre et beauté, Luxe, calme et volupté. Des meubles luisants, Polis par les ans, Décoreraient notre chambre; Les plus rares fleurs Mêlant leurs odeurs Aux vagues senteurs de l'ambre, Les riches plafonds, Les miroirs profonds, La splendeur orientale, Tout y parlerait À l'âme en secret Sa douce langue natale. Là, tout n'est qu'ordre et beauté, Luxe, calme et volupté. Vois sur ces canaux Dormir ces vaisseaux Dont l'humeur est vagabonde; C'est pour assouvir Ton moindre désir Qu'ils viennent du bout du monde. - Les soleils couchants Revêtent les champs, Les canaux, la ville entière, D'hyacinthe et d'or; Le monde s'endort Dans une chaude lumière. Là, tout n'est qu'ordre et beauté, Luxe, calme et volupté. |
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007
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