フランス文学と詩の世界
Poesie Francaise traduite vers le Japonais
HOME本館ブログ東京を描く英文学哲学万葉集漢詩プロフィール掲示板| サイトマップ



マラルメ嬢の扇:ステファヌ・マラルメ


  夢多き子よ 道なき道をたどり
  お前の純粋な喜びのうちに浸れるように
  嘘でもよいから言っておくれ
  私の翼をお前の手で受け止めてくれると

  夕暮れのすがすがしい風が
  扇の一あおぎごとにお前に届く
  お前の手の中の扇が動くたびに
  地平線をかすかに後退させる

  眩暈がする!扇の動きに空間が
  激しい接吻のように震える
  それは誰かのために生まれ出ようとするが
  迸り出ることも静まることもできぬ

  お前はあの野獣たちの天国を感じるかい
  それはまるで 押し殺した忍び笑いが
  お前の口の端から生まれ
  咽喉の奥に吸い込まれていくような感じだ

  ばら色に染まった浜辺の王杓が
  黄金の夕べの光に澱んでいるようだ
  それこそは閉じられた白い扇
  お前はそれを腕輪にあててかざしているのだ


この詩は1884年に書かれ、やはり扇の上に清書された。マラルメの長女ジュヌヴィエーヴは1864年に生まれているから、この詩が書かれたときには、20歳の乙女だったわけだ。マラルメはあるいは、娘が20歳になった記念に、この詩を書き入れた扇をプレゼントしたのかもしれない。






Autre Eventail de Mademoiselle Mallarme - Stephane Mallarme

  O reveuse, pour que je plonge
  Au pur delice sans chemin,
  Sache, par un subtil mensonge,
  Garder mon aile dans ta main.

  Une fraicheur de crepuscule
  Te vient a chaque battement
  Dont le coup prisonnier recule
  L’horizon delicatement.

  Vertige ! voici que frissonne
  L’espace comme un grand baiser
  Qui, fou de naitre pour personne,
  Ne peut jaillir ni s’apaiser.

  Sens-tu le paradis farouche
  Ainsi qu’un rire enseveli
  Se couler du coin de ta bouche
  Au fond de l’unanime pli !

  Le sceptre des rivages roses
  Stagnants sur les soirs d’or, ce l’est,
  Ce blanc vol ferme que tu poses
  Contre le feu d’un bracelet.

  

前へHOMEマラルメ次へ





                        

作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである