フランス文学と詩の世界
Poesie Francaise traduite vers le Japonais
HOME本館ブログ東京を描く英文学哲学万葉集漢詩プロフィール掲示板| サイトマップ



エドガー・ポーの墓:ステファヌ・マラルメ


  ついに永遠が彼自身の姿となって現れたかのように
  詩人が諸刃の剣を振りかざして起き上がると
  同時代人たちは改めて思い知らされるのだ
  この奇怪な声の中に勝ち誇っている死のことを

  怪物ヒドラが痙攣しつつ天使の声を聞いたように
  人々は詩人の言葉に純粋な意味を認めはしたが
  それはどろどろとした黒い水溜りから汲み取られた
  魔法の言葉だと声高に叫ぶのだった

  泥だ 敵意に満ちた雲だと おお悲哀よ!
  我々の想像力がまぶしいポーの墓を
  レリーフで飾ることも出来ないのなら

  陰惨の闇から落ちてきたこの静かな石の塊
  少なくともその石に永遠の霊域を刻み込み
  未来に向かって振りまかれた冒涜の徴を語らしめよ


マラルメはエドガー・アラン・ポーに深く傾倒し、その作品の多くをフランス語に翻訳している。海の彼方に眠るポーの墓を、マラルメが実際にみたことは無論なかったが、生前誰からも評価されなかったこの孤高の詩人の死の意味について、マラルメは尊敬の念を持って語っている。

エドガー・ポーの価値を最初に発見したのは、フランス人のボードレールだ。ポーの故郷アメリカは、いわば逆輸入の形でポーを再発見したが、短編の推理小説を愛することはしても、その詩はなかなか理解されなかった。






Le Tombeau d'Edgar Poe - Stephane Mallarme

  Tel qu’en Lui-meme enfin l’eternite le change,
  Le Poete suscite avec un glaive nu
  Son siecle epouvante de n’avoir pas connu
  Que la mort triomphait dans cette voix etrange !

  Eux, comme un vil sursaut d’hydre oyant jadis l’Ange
  Donner un sens plus pur aux mots de la tribu
  Proclamerent tres haut le sortilege bu
  Dans le flot sans honneur de quelque noir melange.

  Du sol et de la nue hostiles, o grief !
  Si notre idee avec ne sculpte un bas-relief
  Dont la tombe de Poe eblouissante s’orne

  Calme bloc ici-bas chu d’un desastre obscur,
  Que ce granit du moins montre a jamais sa borne
  Aux noirs vols du Blaspheme epars dans le futur.

  

前へHOMEマラルメ次へ





                        

作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである