フランス文学と詩の世界 | |
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ボードレールの墓:ステファヌ・マラルメ |
埋まった宮殿の排水口の奥にのぞいているのは 墓の中からよだれのように染み出たガラクタども ぞっとするようなアヌビスの彫像 その獣のようにとがった鼻面 ガスがランプの芯をよじって炎を上げ 蒙った不名誉をかき消そうとするかのように 炎は不滅の恥骨を燃え尽くそうとするが ただ力なくランプの上で揺らめくのみだ 夕暮れを知らぬ街で作られたドライフラワーが 捧げられて冥福を祈るのは誰のためか それはボードレールの石像の前に添えられている 身を包むべきものもなく 震えながら ボードレールの分身ともいうべき毒の草花が 人に匂いをかがれるのを待ち続けている |
マラルメは19歳のときに「悪の華」に接して以来、ボードレールに深く傾倒した。ボードレールはエドガー・ポーと並んで、彼の詩作の当面の目標となった。ボードレールへの愛情の念は、独自の詩風を確立した後でも変わらなかった。 この詩は1893年に、ボードレールを特集した雑誌に「礼讃」と題して発表された。礼讃の対象として、墓の中のボードレールとその詩の分身とも言うべき毒の草を持ち出しているのは、マラルメ一流のやり方だったのだろう。 アヌビスはエジプトの神話に出てくる、獣面の神、その鼻面は犬のようにとんがっていた。マラルメは何故かボードレールをこのアヌビスに喩えた。また毒の草が人に匂いをかがれるのを待っているとは、悪の華の詩篇の運命について言及した部分である。 |
Le Tombeau de Baudelaire - Stephane Mallarme Le temple enseveli divulgue par la bouche Sepulcrale d’egout bavant boue et rubis Abominablement quelque idole Anubis Tout le museau flambe comme un aboi farouche Ou que le gaz recent torde la meche louche Essuyeuse on le sait des opprobres subis Il allume hagard un immortel pubis Dont le vol selon le reverbere decouche Quel feuillage seche dans les cites sans soir Votif pourra benir comme elle se rasseoir Contre le marbre vainement de Baudelaire Au voile qui la ceint absente avec frissons Celle son Ombre meme un poison tutelaire Toujours a respirer si nous en perissons. |
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007
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