フランス文学と詩の世界
Poesie Francaise traduite vers le Japonais
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牧神の午後:ステファヌ・マラルメ


  かのニンフたち 永遠の命を生きよ

  かくも晴れやかに
  その軽やかな肉体は 
  眠気を誘う空気の中を漂う

  私は夢に耽っていたのか?
  古代の夜が堆積したこの疑問は
  幹をそのままにして 夥しい方向に枝分かれする 
  そして私が自分自身に 勝利の徴に
  偽りのバラ色の理想を捧げたというのだ

  さあよく考えてみよう

  いっそお前を囲むニンフたちが
  伝説の中のお前の欲望そのままならよいのに!
  フォーヌよ 青くて冷たい乙女の目から
  涙に咽んだ純潔な泉のような乙女の目から幻がほとばしる
  もうひとりの乙女がつくため息は
  私の毛の中を吹き渡る暖かい風のようだとお前はいう

  いやいや!重苦しい陶酔の中では
  朝の冷たい大気も熱にあえいで
  小川の水にせせらぎの音を立てさせることもできぬ
  ただ私の笛の音が林の中をこだまするのみだ 
  その笛の二つのパイプからは風が漏れ出て
  心無い雨の中で音を響かす
  それは さえぎるもののない地平線のあたりで
  インスピレーションが空と溶け合う
  澄みわたった人工の息吹だ


牧神の午後はマラルメ畢生の傑作というべき作品であり、通常の文法を軽視した独特の言葉配置、またその言葉の流れの音楽性において、際立った特徴を有している。クロード・ドビュッシーはこの詩の音楽的な美しさに感動し、同名の有名な曲を作り、また20世紀の詩人たちにも限りないインスピレーションを与えた。

マラルメが最初にこの詩を書いたのは1865年、23歳のときである。そのときには「牧神の独白」と題し、舞台で演じられることを意図していたようだ。彼は書き上げた原稿をもって、テオフィル・ド・バンヴィルのもとを訪ね、俳優のコンスタン・コクランに朗読してもらった。しかし音楽的ではあるが、観客の理解を超えているという理由で、上演を拒否されてしまった。

舞台芸術としての発表をあきらめたマラルメは、当時流行していた詩人たちのアンソロジーにこの詩を載せてもらうように何度か試みた。しかしどういうわけか、ことごとく願いが却下されたために、1876年に自費出版した。その際に「牧神の午後」と題名を改め、また詩の内容も大幅に書き換えた。

詩のテクストは結構長いものだが、ここではその冒頭の部分を紹介した。






L'Apres-Midi d'un Faune - Stephane Mallarme

  Ces nymphes, je les veux perpetuer.

  Si clair,
  Leur incarnat leger, qu’il voltige dans l’air
  Assoupi de sommeils touffus.

  Aimai-je un reve ?
  Mon doute, amas de nuit ancienne, s’acheve
  En maint rameau subtil, qui, demeure les vrais
  Bois meme, prouve, helas ! que bien seul je m’offrais
  Pour triomphe la faute ideale de roses.

  Reflechissons...

  ou si les femmes dont tu gloses
  Figurent un souhait de tes sens fabuleux !
  Faune, l’illusion s’echappe des yeux bleus
  Et froids, comme une source en pleurs, de la plus chaste :
  Mais, l’autre tout soupirs, dis-tu qu’elle contraste
  Comme brise du jour chaude dans ta toison ?

  Que non ! par l’immobile et lasse pamoison
  Suffoquant de chaleurs le matin frais s’il lutte,
  Ne murmure point d’eau que ne verse ma flute
  Au bosquet arrose d’accords ; et le seul vent
  Hors des deux tuyaux prompt a s’exhaler avant
  Qu’il disperse le son dans une pluie aride,
  C’est, a l’horizon pas remue d’une ride
  Le visible et serein souffle artificiel
  De l’inspiration, qui regagne le ciel.

  

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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007
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