フランス文学と詩の世界 | |
Poesie Francaise traduite vers le Japonais | |
HOME|本館ブログ|東京を描く|英文学|哲学|万葉集|漢詩|プロフィール|掲示板| サイトマップ |
ボトム:イリュミナション |
俺の寛大な性格にとっても、この世は余りにも刺々しい そこで俺は女主人の家で目を覚ますと 灰色の巨大な鳥となって天井からぶら下がり 宵闇の中に羽根を垂れていたのだった 女主人の寝台には貴重な宝石と人体のレリーフがはめ込まれ その足元に寝そべった俺は 紫色の顎と悲しみにやつれた毛の巨大な熊となり クリスタルとテーブルの上の銀の食器を眺めていた すべてが闇に包まれ、熱い水槽の中にいるようだった 朝、6月のざわめく夜明けのことだ 俺はロバとなって草原を疾走し、悲しみを喇叭に込めて吹き鳴らした すると郊外に住むサビニの女たちが現れ、俺の胸にすがりつくのだった ボトムはシェイクスピア劇「真夏の夜の夢」に出てくるキャラクターである。靴職人のボトムは森の中で寝ているところを妖精パックにマジナイをかけられ、目覚めたらロバに変身していた。ところがその姿を見た妖精の女王タイタニアは、どういうわけかボトムに恋をしてしまう。 シェイクスピアはこの物語を、オヴィディウスの「変身物語」を下敷きにして書いたとされる。ランボーはそのボトムによって、変身をテーマにした散文詩を書いたのだと思われる。 変身するのはランボー自身だろう。最初に鳥になり、ついで熊になり、最後にロバになって草原を疾走する。 詩の中の女主人はタイタニアを念頭においている。 |
Bottom La réalité étant trop épineuse pour mon grand caractère, - je me trouvai néanmoins chez ma dame, en gros oiseau gris s'essorant vers les moulures du plafond et traînant l'aile dans les ombres de la soirée. Je fus au pied du baldaquin supportant ses bijoux adorés et ses chefs-d'oeuvre physiques, un gros ours aux gencives violettes et au poil chenu de chagrin, les yeux aux cristaux et aux argents des consoles. Tout se fit ombre et aquarium ardent. Au matin, - aube de juin batailleuse, - je courus aux champs, âne, claironnant et brandissant mon grief, jusqu'à ce que les Sabines de la banlieue vinrent se jeter à mon poitrail. |
前へ|HOME|ランボー|次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである