フランス文学と詩の世界
Poesie Francaise traduite vers le Japonais
HOME本館ブログ東京を描く英文学哲学万葉集漢詩プロフィール掲示板| サイトマップ

 
ヴェルレーヌ:よき歌 La Bonne Chanson

 
  真白き月
  森を照らしぬ
  木々の枝より
  声は漏るる
  ざわめく葉の隙間より

  愛する人よ

  池の面に月は映ゆる
  鏡の底にあるが如く
  柳の影は
  水に濡れて
  涙するが如くなりき

  いざ夢みん 時は満ちぬ

  心鎮める
  やさしき芳香
  蒼天の星より
  漏れ下り来ぬ
  紫の光を帯びて

  至福の時なりき
   

ワトー「マゼッティーノ」

ヴェルレーヌは友人シヴリーを通じてマチルド・モーテを紹介されるとたちまち恋に陥り、しつこく求愛するようになる。マチルドの両親はヴェルレーヌを警戒したようであったが、ヴェルレーヌはマチルド本人を陥落させようとして、愛の詩を作っては、せっせと送り届けた。その甲斐もあってか、ヴェルレーヌはマチルドと婚約することができたのである。

詩集「よき歌」 La Bonne Chanson は、そんなヴェルレーヌがマチルドに捧げたラブソング集である。

二人の結婚生活は、ランボーの出現によって、めちゃくちゃなものとなったが、この詩集はマチルドの存在があってはじめて生まれたといえる。

「真白き月」はよき歌に収められた詩の雰囲気を代表するもの。女への愛を切々に歌っているようには伝わってこない。






La lune blanche Paul Verlaine

  La lune blanche
  Luit dans les bois ;
  De chaque branche
  Part une voix
  Sous la ramee...

  O bien-aimee.

  L’etang reflete,
  Profond miroir,
  La silhouette
  Du saule noir
  Ou le vent pleure...

  Revons, c’est l’heure 

  Un vaste et tendre
  Apaisement
  Semble descendre
  Du firmament
  Que l’astre irise...

  C’est l’heure exquise.

  

前へHOMEヴェルレーヌ次へ





                        

作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである